花信風(2026/9)
三崎静夫選
9月号の注目歌
- 夕闇に浮き立ちて咲く窓下の白木蓮は思ひ出の花
- 庭さきにミモザの花がゆれている夫の心友逝きし夕昏
- はげましでもらったはずのことばなら人体のなか体操させる
- ひとつやりああ疲れたと一休み休む時間がながーくなりて
- ぼんやりと夜の鏡に映りおり笑っていないドラえもんの顔
- ゴミ捨ての五百歩ほどの往還にご近所二人としゃべる楽しさ
- 太き鞘ぎゅぎゅっとひねると空豆は顔を出したり初夏の匂いす
- この道を通るたび浮ぶ友の顔 草生う空地ひろがりており
- ハナアブのホバリングの音聞きながら洗濯物を青空に干す
- 三月の終わりはなにもかもすべて生ぬるくて生ぬるくて生ぬるい
- オブラートに包まず話せと子らの言う夫の病状伝える夕べ
- 文字変えて「好機幸齢」書いてみる唱えて自身誉め称えよか
- 近づけばヘドロの臭い立ち上るプールの掃除はあまりに辛し
- ほたるいかゆでられ白く小さき目にそれぞれの海の物語眠る
- 母は樋が壊れたからと自動車屋に修理依頼の電話したらし
- 今日の過ぎ一日減りたる残りの日々だだくさになどしてはいられぬ
